KESTREL TECHNOLOGY

Designed by KESTRELとは

ケストレルの設計は、ペンシルベニア州フィラデルフィアで一貫して自社で行っている。研究開発の為の設備投資は惜しまず、最新最高の機器から生み出されたデザインを、厳しい品質管理の下で自転車の形にしている。デザインを決定する上で、もちろん欠かせないのが実走した際のフィーリングであり、PCの画面上から、そこでは分らない人の感性の部分にも訴えかける形状へと最終的な修正を施している。多くの企業がTTフレームの開発を外部で行っている中、ケストレルはそのオーセンティックさで、創業当初からカーボンバイクの先駆者として、最先端を突き進んでいる。

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1986年の創業時から、我々はコンピューターによるモデル構築とFEA(有限要素解析:所定の負荷が加わった際に、構築したモデルがどのような反応を起こすか、シミュレーションする方法)によりデザインを起しており、3-D CADを用いて製品の製作に取りかかれる基データを作成している。

コンピューターによるテストが終われば一旦試作品を作り、実験室でより実践的なテストへと移行する。フレームに最も負荷がかかる状況を想定して、走行中の快適さを維持しながらも、最大限の耐久性とコントロール性を発揮できるようにカーボン素材の構成とフレーム全体の形状を練り上げていく。

次にテストライダーによる試作品のテスト・評価を行う。
ほとんどのバイクブランドは、外部のテストライダーの評価に頼らなければならないが、ケストレルは外部のライダーだけでなく、スタッフ自身も走行時のインプレッションに参加し、外部のテストデータと比較検証する事で、より正確な性能検査を行う。ケストレル社のエンジニア部署まで足を運ぶと、実験用のコートとサイクルジャージが同じハンガーに掛けられている。エンジニアとしてケストレル社に入社する際に、採用条件には知識や職歴だけでなく、サイクリストである事が求められ、ケストレル製品がより優れたバイクになる一つの理由になっている。航空宇宙や軍事産業の出身であるだけでは知識は足りるかもしれないが、最高のバイクを作る為の知恵も持ち合わせている事が、ケストレルのエンジニアに求められる資質であるのだ。

世界初のカーボンバイク専門ブランドとして発足したKESTRELであるが、カーボンをバイクの素材に採用している理由は、造形の自由度にある。ラグを使った構造を採用した場合、パイプとラグを繋ぐ構造上、パイプ製造会社の規格パイプを使用する事が余儀なくされ、理想とする形状のフレームを制作する事が実質不可能である。また、重量も大きな問題となる。ラグ自体の重量もさる事ながら、パイプとラグ接合部分の余分な重量がバイクのパフォーマンスを著しく低下させる。ラグを用いず、各パイプを溶接したフレームでさえも、溶接部分には余計な重量が発生してしまう。

カーボンの造形の自由度がもたらす恩恵の一例が、クランクアームやチェーンリングの干渉を避ける為の凹みをチェーンステーに設ける必要が無く、思い通りのデザインのチェーンステーを、カーボンを使用する事により描く事が出来る。ケストレルの理想とするバイクは平らな箇所がどうしても無くなってしまうため、フレーム全体が複雑に湾曲し、外からは見えないチューブ内部も壁面の厚さが複雑に変化している。

カーボンの素材特性は従来の金属製のパイプとは異なる。金属は、等方性の性質のため、あらゆる方向からの力に対して同じ強度であるが、カーボンは異方性のため構造的に無限に強度を調整することが可能である。フレームやフォーク、ハンドルバーにおけるカーボン繊維の数量や構成、スタックアングルやテーパー変えることで、ねじれに強く横剛性があり、縦の振動吸収性のあるものを作り出すことができる。

製品の完成まで

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ケストレルは製造過程でも細心の注意を払っており、自転車以外の業種でも通用する入念な製造方法を幾つか用いている。

CNC切削で作成した各部分のモールドは、1/1000ミリ単位の誤差になるまで丹念に磨かれる。ローラーでさいの目にカットされたプリプレグをそれぞれのモールドにセットしていく。その後、コンピューター制御の元、約2トンの油圧プレスをかける事により、高圧で圧縮されたカーボン素材は、一つの構造体へと変化を遂げる。

モールドから取り出された各パーツは、6段階の精密加工工程に入り、5層の下塗りと上塗りを繰り返し下地が完成する。品質検査に合格するとデカール、クリアコート、仕上げ加工を行い、そして手作業による研磨へと進んでいく。

妥協なき素材への探求

デザインした通りの性能を発揮するには、素材に一切の妥協は許されない。その為、素材の品質管理にはこれ以上無い細心の注意を払う必要がある。全てのケストレル製品はユニディレクショナル プリプレグ カーボン(編目の無いカーボン素材)を採用している。このカーボンを採用した理由は、繊維が一方向に延びている為、高い強度が得られる為で、このカーボンを丹念に織り上げる事で、各セクションの剛性・強度を微調整する事を可能にしている。

プリプレグ カーボンとはカーボン繊維にあらかじめエポキシ樹脂を染み込ませてある物で、ハンドレイアップ製法で制作されるフレームと比較し、重量・強度・剛性で圧倒的に優るフレーム制作方法である。

フレームをより強く、軽量にする為には、カーボン繊維とエポキシ樹脂の理想的な配分比率があり、樹脂の量が少なければ、接着力が弱く構造体としての強度が落ち、逆に多過ぎる場合はその部分が重くなり、想定した性能を発揮する事が出来なくなる。これはエポキシ樹脂その物は強度を持っていない性質に起因している。(エポキシ樹脂が強度を持っていれば、カーボンを使用せずにプラスチックでバイクを制作する事が可能である。)プリプレグを使用することによって、最適のファイバー樹脂の比率をバイクのどの部分でも実現出来、軽量で頑丈なフレームの製作が可能となる。航空宇宙産業やF1を始めとする産業にプリプレグを採用するのはこの為である。

カーボンについての研究

カーボンがバイクフレームに最適な素材である事は疑う余地もない。その軽量さ、高強度、高剛性、耐久力は突出しており、振動吸収性に至っては金属フレームの10~15倍にもなる。しかし、これだけカーボンフレームが世の中に氾濫していると、どれも一緒に見えてきてしまう事があるだろう。しかし一口にカーボンを使用しているからと言って、すべてのカーボンフレームが同じ性質では無いと理解して頂く必要がある。金属にもあるように、カーボンの素材にもグレードがあり、強度と精度に違いがある。その性能差がバイクをデザインした時にダイレクトに反映される。粗悪な素材を使用すると、保険をかける意味で、カーボンを多く使う必要性が発生し、デザインの自由度と軽量さが損なわれる等、様々なデメリットが発生する。

我々は、700Kと800Kという2種類のグレードのカーボン繊維を使用している。“K”というのは ksiの略で、1平方インチあたりの引っ張り強度の度合を示しており、700Kカーボンは、1平方インチあたり700,000ポンドの引っ張り強度 、800Kカーボンはより強度があり、1平方インチあたり800,000ポンドの引っ張り強度を持つ。この引っ張り強度を他の素材と比較すると、その強さが如何に並外れているかがイメージできる。クロムモリブデン鋼は、63-97 ksiの範囲。3Al/2.5Vチタニウムは73-90 ksiの範囲に、6Al/4Vチタニウムは128-138 ksiの範囲に、6061-T6アルミニウムは40-45 ksiの範囲に、7075-T6アルミニウムは73-83 ksiの範囲の引っ張り強度があり、この数値からもカーボン素材の持つ優位性は明らかである。

強度は自転車の安全性を確保する上で、重要な要素であり、マシンの性能を左右する上で、剛性も非常に重要な意義を持つ。剛性の高いフレームはより効率的にペダリングパワーを路面に伝えられる為、我々は素材の持つ剛性にも非常に神経質にならざるを得ない。剛性が高い素材を使用する事は、より軽い車体の製作が可能となり、より戦闘的なバイクとなるのだ。カーボンがどれ程の剛性を持っているかをご説明しよう。KESTRELで使用している700Kの素材には33.4msiの堅さがあり、そして800Kカーボン繊維は42.7msiである。参考までに、3Al/2.5Vチタニウムは14.5msi、クロムモリブデン鋼(自転車フレームで使用される中で最も硬い金属)は29.7msiで6Al/4Vチタニウムは16.5msiであり、6061-T6と7075-T6アルミニウムはそれぞれ10.0と10.4msiである。この事からKESTRELのカーボンが高剛性である事をご理解頂ける事であろう。 そして、800Kカーボンが700Kカーボンより約30%剛性が高いため、フレームセットで同じ剛性を発揮させようとすると、約20%少ない材料で作ることが可能。 しかし、単純に700Kカーボンの代わりに800Kを使用する事は出来ず、新しいフレームを開発するのとほぼ変わらない手間が必要である。カーボンの特性が変われば、カーボン生地の使用方法が変わるのは至極当然であり、もしそのまま700Kと800Kを入れ替えたとしても、マーケティングの材料として800Kを使用したカーボンフレームと謳えるが、乗り味の面でスポイルされる要素が多い。しかし、そのようなフレームにKESTRELのロゴを使用する事は決して無い。

いくつかの自転車メーカーの中には、“gsm”という単位で材料の優位性を謳っている場合もあるが、この単位は一単位面積当たりの繊維の質量、あるいはカーボンクロスの1平方メートル辺りの密度を使用して素材の特性を表しており、密度だけでは強度・剛性との関係性を説き表せない。 1枚110gsmのシートは120gsmのシートより少ないカーボン繊維で構成されている。それはつまり110gsmの方がより軽いという事であるが、結局、完成された製品において同じ強度・剛性を保つためには110gsmカーボンをもっと余分に使用しなければならない為、フレームを製作した時の乾燥重量は120gsmで製作した場合の方が軽い可能性がある。 KESTRELは全てのフレーム・コンポーネントを剛性と強度が高い次元で両立した至高の物にするべく、日々研究を重ねている。

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